
はじめに
不動産を売却する際、多くの方が注目するのは「いくらで売れるか」ですが、同じくらい大切なのが「いくらかかるのか」という視点です。 売却価格そのままが手元に入るわけではなく、さまざまな費用が差し引かれます。 この記事では、不動産売却時に発生する主な費用について、具体例を交えながらわかりやすく解説します。
1. 不動産売却時の費用まとめ(一覧表)
以下は不動産売却にかかる主な費用を一覧にしたものです。
項目 | 支払い時期 | 費用の目安 |
---|---|---|
仲介手数料 | 売却成立時 | (売却価格 × 3% + 6万円)+ 消費税 |
印紙税 | 契約時 | 1万〜3万円(契約額により異なる) |
抵当権抹消費用・司法書士報酬 | 売却時 | 約1万〜3万円+登録免許税 |
譲渡所得税・住民税 | 売却翌年(確定申告) | 利益が出た場合に課税(20〜39%程度) |
測量・解体・リフォーム費 | 売却前 | 任意(数十万〜200万円程度) |
2. 仲介手数料(売却価格に応じて変動)
不動産会社に売却を依頼した場合、仲介手数料がかかります。これは売却が成立した際にのみ支払う成功報酬であり、宅地建物取引業法によって上限が定められています。
売却価格 | 仲介手数料の上限(税抜) |
---|---|
200万円以下 | 売却価格 × 5% |
200万円超〜400万円以下 | 売却価格 × 4% + 2万円 |
400万円超 | 売却価格 × 3% + 6万円 |
例:売却価格が3,000万円の場合
- 3,000万円 × 3% = 90万円
- 90万円 + 6万円 = 96万円
- 96万円 + 消費税(10%) = 約105.6万円
不動産会社によっては割引やキャンペーンを実施している場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
3. 印紙税(売買契約書に貼付)
不動産売買契約書には、法令に基づき「印紙」を貼り付けて納税する必要があります。売主・買主がそれぞれ負担するのが一般的です。
印紙税は売買契約書を交わすタイミングで必要となり、契約締結時に印紙を購入して契約書に貼付・消印します。
契約金額 | 印紙税額(軽減措置後) |
---|---|
1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 3万円 |
※ 上記は「不動産の譲渡に関する契約書」に対する印紙税の例です。現在は軽減措置が適用されており、記載の税額は軽減措置適用後の金額です(令和9年3月31日まで適用)。
※ 表は代表的な契約金額帯を抜粋したもので、詳細は国税庁の資料をご確認ください。
国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
4. 抵当権抹消費用・司法書士報酬
住宅ローンを利用して購入した不動産には、金融機関によって抵当権(担保権)が設定されています。売却の際には、この抵当権を抹消する必要があります。
抵当権の抹消には以下の費用がかかります:
- 登録免許税:不動産1件につき1,000円
└ 法務局に支払う税金で、登記に必要です。 - 司法書士報酬:1万〜3万円程度
└ 専門家である司法書士に登記を依頼するための費用です。
※ これらの費用は売却が決まり、住宅ローン残債を一括返済した後に発生します。
5. 譲渡所得税・住民税(売却益が出た場合)
不動産を売却して利益が出た場合、「譲渡所得」として所得税・住民税が課税されます。
- 取得費:購入時の土地・建物代、仲介手数料、登記費用、不動産取得税など
└ 建物は減価償却が必要な場合もあります。 - 譲渡費用:売却のための費用(仲介手数料、測量費、解体費、広告費、印紙税など)
税率は「所有期間」に応じて異なります:
所有期間 | 税率(所得税+住民税+復興税) |
---|---|
短期(5年以下) | 約39.63% |
長期(5年超) | 約20.315% |
※ 所有期間は「譲渡した年の1月1日時点で5年を超えているかどうか」で判定します。
これは、居住用財産を売却して得た譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度で、一定の条件(家屋の居住実態や他の特例の併用制限など)を満たす必要があります。
このほかにも、「買換え特例」や「相続財産の取得に係る特例」など、状況に応じてさまざまな税制優遇措置があります。どの制度が利用できるかはケースによって異なるため、制度の詳細を事前に確認することが重要です。
⏰ 税金の支払い時期は?
譲渡所得にかかる税金は翌年の確定申告にて申告・納税します。たとえば、2025年に不動産を売却して譲渡所得が出た場合、2026年2月16日〜3月15日の確定申告期間内に手続きを行い、3月中に納付するのが一般的です。
特例の適用や控除の有無によって納税額は大きく変わるため、事前に税理士に相談しておくと安心です。
6. 測量・解体・リフォームなどの実費
不動産売却時には、物件の状態や売却条件に応じて、売主側で実費負担が発生することがあります。以下は代表的な費用とその概要です。
項目 | 内容 | 費用目安 | 発生タイミング |
---|---|---|---|
測量費用 | 境界が不明確な土地に対し、土地家屋調査士が行う測量。 | 10万〜50万円程度(確定測量は高額) | 売却活動前 |
解体費用 | 古家付き土地を更地として売却する際の建物解体。 | 100万〜200万円程度(木造の場合) | 売却決定後〜引き渡し前 |
リフォーム費用 | 内装の補修・壁紙の張替えなど簡易修繕。 | 10万〜30万円程度 | 売却活動前 |
ハウスクリーニング | 室内を清掃し印象を向上させる施策。 | 数万円〜10万円程度 | 売却活動前 |
まとめ
不動産売却では「売却額」ではなく「手取り額」に注目することが重要です。仲介手数料や税金、測量・解体費などの費用がかかることを想定し、事前の資金計画を整えておくと安心です。