遺族年金の仕組みと受給できる条件

遺族年金

はじめに:遺族の生活を保障する年金制度

突然の不幸で一家の大黒柱を失った場合、残された家族の生活は大きな不安に直面します。そうしたときに家族を経済的に支えるのが「遺族年金」です。遺族年金は、公的年金制度の一部として整備されており、被保険者が死亡した場合に一定の条件を満たした遺族が受給できる仕組みです。生活の基盤となる収入を失った遺族にとっては、大切な生活保障の柱となります。しかし、制度は複雑で「誰が対象になるのか」「いくらもらえるのか」「どんな手続きが必要か」を正しく理解していない人も多いのが現実です。

この記事では、遺族年金の概要や受給条件、受給額の計算方法、注意点を整理し、万が一のときに家族を守るために知っておくべきポイントを解説します。

1. 遺族年金とは?制度の概要

遺族年金は、公的年金に加入していた人が死亡した場合、その遺族に対して支給される年金です。主に2種類があります。

種類 内容
遺族基礎年金 国民年金に基づく給付で、18歳到達年度末までの子がいる配偶者や子に支給される。
遺族厚生年金 厚生年金に基づく給付で、厚生年金の加入者や受給資格者が死亡した場合に支給される。

被保険者が現役中に亡くなった場合だけでなく、すでに年金を受給していた人が死亡した場合も条件を満たせば遺族年金が支給されます。

💡遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2本柱で構成され、家族の生活を支える役割を持っています。

2. 遺族基礎年金の受給条件

遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が死亡したときに、子のいる配偶者または子に支給されます。

受給対象者 条件・内容
子のある配偶者 18歳到達年度末まで(または20歳未満で障害等級1級または2級)の子がいる配偶者に支給。
18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある場合に支給。

例えば、小学生の子がいる母親が夫を亡くした場合、母は遺族基礎年金を受給することができます。一方、子のいない配偶者は遺族基礎年金を受給できない点が大きな特徴です。

また、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。

💡遺族基礎年金は「子どもの存在」が支給条件に直結しているため、配偶者のみでは受給できません。また、同居している親が受給している場合、子自身には支給されない仕組みになっています。

3. 遺族厚生年金の受給条件

遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が死亡した場合に、その遺族に支給されます。死亡した方に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。なお、遺族基礎年金を受給できる遺族の方は、あわせて受給することも可能です。

優先順位 受給対象者 条件・補足
1 子のある配偶者 もっとも一般的な受給者。妻が多く該当。
2 18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態。
※子のある妻または55歳以上の夫が受給している間は、子には支給されない。
3 子のない配偶者 子のない30歳未満の妻は5年間のみ受給可能。
子のない夫は55歳以上に限り受給でき、受給開始は原則60歳から。
(ただし遺族基礎年金と併給できる場合は55〜60歳でも受給可)。
4 父母 55歳以上に限り対象。受給開始は60歳から。
5 18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態。
6 祖父母 55歳以上に限り対象。受給開始は60歳から。

特に妻が受給できるケースが多く、夫が会社員として厚生年金に加入していた場合、その死亡後に妻へ遺族厚生年金が支給される仕組みです。

💡遺族厚生年金は優先順位によって支給対象が決まり、配偶者・子が中心です。年齢制限や受給開始年齢の条件もあるため、家族構成やライフステージによって受給可否が変わります。

4. 受給額の計算方法

遺族年金の額は種類によって異なり、基礎年金と厚生年金で算定方法が異なります。

遺族基礎年金の年金額(令和7年4月分から)

対象者 年金額
子のある配偶者
  • 昭和31年4月2日以後生まれ:831,700円 + 子の加算額
  • 昭和31年4月1日以前生まれ:829,300円 + 子の加算額
子本人

次の金額を子の人数で割った額が1人あたりの支給額となります。

  • 基本額:831,700円
  • 第1子・第2子の加算額:各239,300円
  • 第3子以降の加算額:各79,800円

遺族厚生年金の年金額

計算方法 詳細
基本額 死亡した方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3
加入期間が25年未満 被保険者期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算
65歳以上で老齢厚生年金受給権がある場合 以下のいずれか高い方が支給額となる:
  • 死亡した方の報酬比例部分の4分の3
  • 死亡した方の報酬比例部分の2分の1 + 自身の老齢厚生(退職共済)年金の2分の1

例えば、夫が厚生年金に40年間加入し、老齢厚生年金の見込額が年間120万円だった場合、妻に支給される遺族厚生年金はその4分の3で年間90万円程度となります。これに遺族基礎年金が加わるケースもあります。

💡遺族基礎年金は「定額+子の加算」で構成され、子の人数によって増減します。遺族厚生年金は「亡くなった人の収入・加入期間・遺族本人の受給状況」により計算が変わり、ルールが複雑なので注意が必要です。

5. 他の年金との併給調整

遺族年金は他の年金と同時に受け取れるとは限りません。

  • 遺族基礎年金と老齢基礎年金は同時には受け取れない。
  • 遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金は一部併給が可能。

たとえば妻が自分自身の老齢基礎年金を受け取れる年齢になると、遺族基礎年金は打ち切られることがあります。この「併給調整」を理解していないと、将来の年金額を誤解する恐れがあります。

💡併給のルールを誤解すると「思ったより年金が減った」と感じる原因になります。制度の仕組みを理解しておきましょう。

6. 申請に必要な書類と手続き方法

遺族年金は自動的には支給されず、申請が必要です。主な必要書類は以下の通りです。

  • 年金請求書(遺族基礎年金・遺族厚生年金用)。
  • 死亡診断書または死体検案書。
  • 戸籍謄本・住民票。
  • 収入や生計維持関係を証明する書類。
  • 亡くなった人の年金手帳や基礎年金番号通知書。

申請は年金事務所や市区町村の窓口で行います。期限を過ぎるとさかのぼって支給されない場合があるため、早めの手続きが必要です。

💡遺族年金は「申請しなければもらえない」制度です。必要書類を早めに準備し、期限を意識して動きましょう。

7. 受給する際の注意点

遺族年金を受け取る上での注意点も押さえておきましょう。

  • 子が18歳を過ぎると遺族基礎年金は打ち切りになる。
  • 再婚した場合は受給資格を失うケースがある。
  • 遺族厚生年金の金額は被保険者の加入期間や収入により大きく変わる。
  • 他の給付(障害年金・老齢年金)との併給関係を確認しておく必要がある。

誤解や勘違いで「本当は受け取れるのに申請していなかった」という事例も少なくありません。

💡ライフイベント(子の成長・再婚など)で資格が変動します。定期的に制度を確認することが大切です。

まとめ:遺族の生活を守るために理解しておきたい制度

遺族年金は、被保険者が亡くなったときに残された家族を支える重要な制度です。

  • 遺族基礎年金 → 子のいる配偶者または子に支給。
  • 遺族厚生年金 → 厚生年金加入者の遺族に支給。
  • 受給額は定額+加算や報酬比例部分で計算。
  • 他の年金との併給制限があるため注意が必要。

「もしものときに、どんな支援が受けられるのか」を知っておくことは、家族の安心につながります。遺族年金を正しく理解し、手続きや条件を把握しておくことで、大切な家族の生活を守る備えとなるでしょう。

💡遺族年金は「知っているかどうか」で受け取れる金額や期間が大きく変わる制度です。制度の仕組みを早めに理解し、家族で情報を共有しておくことが安心につながります。

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