
はじめに
子どもが生まれると、親としてまず考えるのが教育費の準備です。小学校〜大学まで進学した場合、私立を含めた総額は1,000万円を超えることも珍しくありません。このまとまった資金をどのように準備するかは、家庭の資産形成にも大きな影響を与えます。
その代表的な手段が「学資保険」と「積立投資」。どちらも計画的な資金準備に役立ちますが、それぞれの仕組みやリスクは異なります。本記事では、両者の違いや併用方法を比較しながら、家庭に合った選び方を考えていきましょう。
1. 学資保険とは?メリットとデメリット
学資保険は、保険会社が提供する「貯蓄型」の保険商品です。契約期間中に一定の保険料を支払い、子どもの進学時期(高校・大学入学など)に合わせて祝い金や満期金を受け取る仕組みです。
メリット
- 貯蓄習慣を作りやすい
- 契約者(親)が死亡した場合でも保険料の支払いが免除され、満期金は受け取れる
- 満期まで持てば元本割れしにくい
デメリット
- 途中解約すると元本割れの可能性がある
- 利回りは非常に低く、インフレに弱い
- 柔軟性がなく、投資先や運用方針を自分で選べない
2. 積立投資による教育資金準備の考え方
積立投資は、投資信託などを活用して定期的に資金を積み立て、長期的に資産を増やす方法です。ジュニアNISAや特定口座などで運用することで、教育資金の形成に繋げられます。
メリット
- 複利の力で資産が増えやすい
- 運用成果次第で学資保険を上回る可能性も
- 途中の引き出しや運用調整が可能
デメリット
- 元本保証はない(リスクあり)
- 相場変動によって目標額に届かない可能性がある
- 投資判断・知識が求められる
3. 安全性・流動性・リターンの違いを比較
両者は目的こそ同じですが、「何を優先するか」によって選び方が変わってきます。以下は、学資保険と積立投資の違いを「安全性」「流動性」「リターン」の観点から比較した表です。
比較項目 | 学資保険 | 積立投資 |
---|---|---|
安全性(元本確保) | ◯ | △(リスクあり) |
流動性(途中引き出し) | × | ◯ |
リターン(増やす力) | △(低め) | ◯ |
学資保険は「安全第一」の資金確保に向いていますが、資産形成という視点では積立投資の方が有利なケースが多いといえます。ご家庭の方針に合わせて、どの要素を優先するかを整理して選びましょう。
4. 元本確保 vs 資産成長、どちらを優先すべきか
教育費の準備において、何よりも大事なのは「確実に用意できること」。しかし、今の金利環境では保険だけでは思ったほど資産が増えません。
リスクを完全に避ける=リターンを放棄することにも繋がるため、運用で資金を増やすことも視野に入れる必要があります。教育資金の性質上、「元本を確保したい時期」があるため、積立投資を行う場合は、リスクの高い商品から低リスク商品に移す「リスクコントロール」も重要になります。
5. 学資保険と積立投資の併用という選択肢
実は「どちらか一方に絞る」必要はありません。たとえば、学資保険で最低限の資金(入学金や初年度授業料)を確保しつつ、積立投資で追加費用(生活費や留学費)を賄うといった使い分けも可能です。
リスクを抑えつつ、将来の選択肢を広げる「ハイブリッド戦略」として、併用は非常に合理的な手段といえるでしょう。
6. 途中解約や万が一の備えはどう考える?
学資保険は途中解約で元本割れする可能性がある一方で、親に万が一があった際の「保障機能」を持っています。
一方で、積立投資にはそのような機能がないため、別途生命保険で保障を準備しておく必要があります。
また、教育資金が不要になる事態(奨学金、進学しない等)にも備えて、柔軟に使える積立投資の方が対応しやすい面もあります。
7. 家庭の方針やライフスタイルに合わせた選び方
教育資金の準備に正解はありません。
- 確実性を重視したい → 学資保険中心
- 自分で運用に取り組みたい → 積立投資中心
- バランスよく備えたい → 両方を併用
また、ライフスタイルや収入の安定性、投資への理解度などによってもベストな方法は異なります。家計と相談しながら、長期的に無理のない準備方法を選ぶことが大切です。
まとめ:教育費の準備は“貯め方”より“考え方”が大切
教育資金は子どもの未来を支える重要な資金です。学資保険と積立投資、それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが優れているとは一概にいえません。
大切なのは、「どう貯めるか」よりも「どんな考え方で備えるか」。
- 確実性を取りたいのか
- 資産成長を狙いたいのか
- 万が一に備えたいのか
家庭の価値観や方針をベースに、自分たちに合った教育資金準備を選んでいきましょう。未来の選択肢を広げるために、今から一歩ずつ行動を始めることが何よりの備えです。