
はじめに:パート・アルバイトでも社会保険に入れるのか?
社会保険は正社員だけのものと思われがちですが、実はパートやアルバイトでも一定の条件を満たせば加入する義務があります。特に近年は法改正によって対象が拡大し、短時間労働者であっても社会保険に加入するケースが増えてきました。
社会保険に加入すれば医療費が3割負担になるだけでなく、将来の年金額や休業補償にも影響するため、働き方を決める上で重要なポイントとなります。ここでは、パートやアルバイトが社会保険に入る条件やメリット・注意点を整理して解説します。
1. 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件
パート・アルバイトでも社会保険に加入できる条件は、次の2つに大きく分かれます。
- 一般的な条件(正社員の4分の3基準)
正社員の所定労働時間および日数のおおむね4分の3以上働いている場合。 - 短時間労働者の特例(週20時間以上などの基準)
正社員の4分の3未満であっても、一定の要件を満たすと加入対象になる。
この短時間労働者への適用拡大により、週20時間以上働くパートやアルバイトの多くが社会保険加入の対象になっています。
2. 週の労働時間と勤務日数の基準
従来の目安は「正社員の4分の3以上働く」ことでした。例えば正社員の勤務時間が1日8時間・週5日(40時間)の場合、その4分の3は週30時間以上・週4日以上です。この条件を超えると社会保険の加入義務が生じます。
さらに、法改正によって拡大された短時間労働者向けの基準では、次のような条件が定められています。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円以上)
- 雇用期間が2か月超見込み
- 学生でないこと(一定の例外あり)
- 勤務先が従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)
この基準を満たすと、たとえ週3日・1日6時間程度の勤務でも社会保険に加入する必要が出てきます。
3. 月収要件と見込み年収の考え方
社会保険の加入判定では、実際の収入額ではなく 「見込みの月収」 が基準になります。
例えば、時給1,200円で週25時間働くと月収は約12万円。月8.8万円の基準を超えるため、加入対象です。
ボーナスや一時的な残業代は基準に含めない一方で、通勤手当などは賃金に含めて判断されます。
4. 学生アルバイトの場合の特例
原則として、昼間の学生は週20時間以上働いていても社会保険の加入対象外です。
ただし、夜間学生や通信制、休学中の学生は除外されることがあり、この場合は一般の短時間労働者と同様に加入義務が生じます。
学生アルバイトは税制上の扶養や奨学金との関係もあるため、自分が「学生特例」に当たるかを勤務先に確認しておくと安心です。
5. 企業規模による違い
短時間労働者の社会保険加入は、勤務先の企業規模によっても条件が異なります。
- 従業員数501人以上の企業:すでに週20時間以上で対象
- 従業員数101~500人の企業:2022年10月から適用
- 従業員数51~100人の企業:2024年10月から適用予定
つまり今後は、中小企業で働くパート・アルバイトも幅広く社会保険に加入する流れになります。
6. 雇用契約と実態の照合
社会保険の加入可否は、雇用契約書に書かれた労働時間だけでなく、実際の勤務実態で判断されます。
例えば契約上は「週15時間」としていても、実際にはシフトや残業で週20時間を超えている場合、社会保険の加入対象になることがあります。
7. 加入によるメリット・デメリット
社会保険に加入すると、将来にわたる安心が得られる一方で、負担も生じます。
メリット
- 医療費3割負担の健康保険証を取得できる
- 傷病手当金や出産手当金が利用できる
- 将来の年金額が増える(厚生年金に加入するため)
- 保険料は会社と折半される
デメリット
- 保険料の自己負担が発生し、手取り収入が減る
- 扶養から外れる場合、世帯全体での負担増になることもある
8. 未加入で働いている場合の注意点
条件を満たしているにもかかわらず社会保険に加入していない場合、会社に是正を求めることができます。加入義務があるにもかかわらず未加入のままにすると、労働基準監督署や年金事務所から指導を受ける可能性もあります。
本人にとっても、以下のような不利益につながります。
- 病気やケガで休んだときに傷病手当金を受けられない
- 出産時の保障が得られない
- 将来の年金額が減ってしまう
まとめ:自分の働き方が社会保険に当てはまるか確認しよう
パート・アルバイトでも、以下の条件を満たせば社会保険に加入しなければなりません。
- 週20時間以上働く
- 月収8.8万円以上
- 雇用期間2か月超
- 学生でない
- 勤務先の企業規模が基準以上
働き方によっては「扶養から外れて手取りが減る」と感じるかもしれませんが、長期的に見れば医療や年金の保障が充実し、安心につながります。