海外に住む・旅行する場合の健康保険の扱い

海外在住と健康保険の関係

はじめに

日本では国民皆保険制度によって、原則としてすべての国民が健康保険(社会保険または国民健康保険)に加入しています。しかし、海外に住んだり長期滞在したりする場合、この制度はそのまま適用されるわけではありません。

短期の旅行であれば日本の健康保険証をそのまま保持しておけますが、海外に生活の拠点を移す場合は住民票や保険の資格に影響が出ます。さらに、海外で医療を受けた場合は、日本の健康保険証を提示しても使うことはできず、制度上「海外療養費」の申請を通じて一部の払い戻しを受ける形となります。

この記事では、海外で生活や旅行をする際の健康保険の扱いを整理し、制度上の違いや注意点を分かりやすく解説します。

1. 日本に住民票があるかどうかでの違い

健康保険の加入資格は、日本に住所を有することが前提となっています。そのため、住民票を残すかどうかが大きな分岐点です。

住民票を残す場合

海外滞在中であっても日本国内に住所があるとみなされ、国民健康保険や社会保険の資格は継続されます。したがって、海外旅行や短期留学など、住民票を動かさずに滞在する場合は健康保険証を保持し続けられます。

住民票を抜いた場合(国外転出届を提出)

日本に住所がなくなるため、国民健康保険や社会保険の資格は原則として喪失します。つまり、日本の健康保険証は無効となり、再び帰国して住民票を戻すまで再加入できません。

住民票の有無は、健康保険の扱いに直結するため、海外移住や長期滞在を計画する際には慎重な判断が必要です。

💡住民票の有無が保険資格を左右します。短期滞在なら残す、長期移住なら抜くなど状況に応じた判断をしましょう。

2. 海外赴任の場合の取り扱い

企業から海外赴任を命じられた場合の健康保険の取り扱いは、勤務先の制度によって異なります。

日本の社会保険に引き続き加入するケース

駐在員として海外に派遣される場合、多くの企業は国内の健康保険組合に加入し続けられる仕組みを整えています。これにより、赴任中も日本の保険資格を維持し、帰国後もスムーズに利用できます。

現地法人で雇用されるケース

現地法人に転籍して働く場合は、日本の健康保険資格を喪失し、現地の医療保険制度に加入する必要があります。この場合、日本の保険証は使えなくなります。

企業の制度や派遣形態によって大きく取り扱いが異なるため、赴任前に必ず人事部や健康保険組合に確認することが大切です。

💡海外赴任は「駐在員扱い」か「現地採用」かで健康保険の扱いが大きく変わります。事前確認が必須です。

3. 留学や長期滞在時の国保資格喪失

留学やワーキングホリデーなどで1年以上海外に滞在する場合、住民票を抜けば国民健康保険の資格を失います。これは「日本に住所を有しない」状態になるためです。

資格を喪失した後は、日本の医療保険を利用できなくなり、海外での医療はすべて自己負担となります。そのため、多くの留学生は「海外旅行保険」や「留学保険」に加入して備えます。

一方で、住民票を抜かずに留学する選択を取る人もいますが、その場合は保険料の支払い義務が継続します。長期間利用できないにもかかわらず保険料だけ払い続けることになるため、経済的な負担とのバランスを考える必要があります。

💡長期滞在では住民票を抜くと国保資格喪失。残すと保険料負担が続きます。費用と保障のバランスを考えましょう。

4. 旅行中の医療費と海外療養費制度

短期の海外旅行で病気やケガをした場合、日本の保険証を提示しても現地では利用できません。その場では全額自己負担となります。

ただし、帰国後に「海外療養費制度」を使えば一部が払い戻されます。払い戻しの対象となるのは「日本で保険適用となる治療」に限られ、しかも支給額は「日本で同じ治療を受けた場合の費用」が基準となります。

例えばアメリカで盲腸の手術を受けて200万円かかったとしても、日本での費用が60万円と認定されれば、その7割(約42万円)が払い戻されるにとどまります。差額は自己負担です。

このため、海外療養費制度はあくまでセーフティネットであり、海外旅行中の医療費リスクに備えるには不十分といえます。

💡海外療養費制度は一部補填にすぎません。高額な医療費リスクには不十分です。

5. 海外旅行保険との併用の重要性

実際に海外で安心して医療を受けるためには、海外旅行保険への加入が欠かせません。

  • 高額医療費のカバー
    実際にかかった費用を補償してくれるため、数百万円単位の医療費も負担なしで済みます。
  • キャッシュレス診療
    提携医療機関であれば現金を払わずに受診できるため、急なトラブルでも安心です。
  • 付帯サービス
    医療通訳、搬送サービス、家族の渡航費用補償なども付いている場合があります。

健康保険による海外療養費と海外旅行保険は併用可能です。旅行保険でまずカバーし、不足分を海外療養費で補うというイメージです。

💡海外旅行保険と海外療養費は併用可能。旅行保険でカバーし、不足分を療養費で補いましょう。

6. 帰国後の健康保険再加入の流れ

海外から帰国した場合、住民票を再び日本に戻すと同時に健康保険への再加入が必要です。

  • 会社員として雇用される場合 → 勤務先を通じて社会保険に加入
  • 自営業・無職の場合 → 住民票を置いた市区町村で国民健康保険に加入

再加入の際には、海外滞在中の保険状況を確認されることがあります。また、保険料は住民票を戻した時点から発生するため、帰国直後に早めに手続きを行うことが大切です。

💡帰国後は住民票を戻すと同時に保険再加入を。保険料は戻した日から発生します。

7. 海外移住を見据えた対応策

将来的に海外移住を予定している場合、健康保険をどう扱うかは大きな課題となります。

  • 住民票を抜いて日本の保険料負担をなくす
  • 現地の医療保険制度に加入する
  • 必要に応じて国際医療保険に加入する

特に欧米諸国では医療費が高額なため、現地保険制度と国際医療保険を組み合わせて利用するケースが多いです。日本の健康保険はあくまで「日本に住所がある人」を対象とした制度であり、長期的な海外生活を想定する場合には別の備えが必須になります。

💡海外移住では現地制度+国際保険を組み合わせるのが一般的。日本の保険は住所が前提です。

まとめ:海外生活と健康保険の関係を正しく理解する

海外に住む・旅行する場合、日本の健康保険はそのまま使えるわけではありません。短期滞在であれば住民票を残して資格を維持できますが、長期滞在や移住では住民票を抜くことで資格を喪失します。

旅行中の医療費は「海外療養費制度」で一部が払い戻されますが、現地での実費を完全にカバーできるものではなく、海外旅行保険との併用が現実的です。

帰国後は速やかに健康保険へ再加入し、海外生活を視野に入れる場合は現地保険や国際保険を検討する必要があります。制度の仕組みを正しく理解し、海外でも安心して生活を送れるよう準備しておきましょう。

💡海外療養費制度はセーフティネット。実際の安心には海外旅行保険・現地制度との組み合わせが不可欠です。

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