
はじめに
「そろそろマイホームが欲しいけど、自分の年収でどれくらいの家が買えるんだろう?」——住宅購入を考える人なら誰もが抱く疑問です。住宅ローンを使えば高額な物件も手が届くように見えますが、年収に見合わない借入は家計を圧迫し、生活を苦しくしてしまうリスクも。
この記事では、年収から導ける「買える家の目安」や、金融機関の審査基準、返済可能なローンの金額、そして家計にやさしいマイホーム選びのための考え方まで、FP(ファイナンシャルプランナー)的な視点で詳しく解説していきます。
1. 年収から考える「買える家」の目安とは?
一般的に、住宅ローンの借入可能額は「年収の5〜7倍」と言われます。たとえば、年収500万円の人なら2,500〜3,500万円程度が目安。ただし、これはあくまで「借りられる限界」であり、「無理なく返せる金額」ではありません。
無理のない購入金額として推奨されるのは、「年収の4〜5倍」。つまり年収500万円であれば、理想は2,000〜2,500万円程度に抑えるのが堅実です。
2. 住宅ローン審査で見られるポイントとは?
住宅ローンを借りる際、金融機関が重視するのは「返済負担率」と呼ばれる指標です。これは、年収に対して年間返済額が占める割合のことで、一般的な目安は以下のとおり:
- 年収400万円未満:返済負担率30%以内
- 年収400万円以上:返済負担率35%以内
つまり年収600万円の人なら、年間返済額は最大210万円(=月17.5万円)が限度。それを超えるローンは原則NGです。
また、審査では以下のような項目もチェックされます:
- 勤続年数(2年以上が理想)
- 雇用形態(正社員かどうか)
- 他のローンの有無(車・奨学金など)
- 年齢(完済年齢が80歳以下か)
- 配偶者の収入(共働きか単独名義か)
3. 無理のない住宅ローン返済額の考え方
「借りられる金額」ではなく、「返せる金額」を基準にするのが住宅購入での鉄則です。
目安としては、「手取り月収の25%以内」に月々の返済額を抑えるのが理想。例えば、手取り月収25万円であれば、月々の返済は約6万円〜6.5万円が安全圏です。
このくらいの支出であれば、教育費や老後資金といった将来の支出にも対応しやすくなります。
家計に余裕を残してローンを組むことで、将来の教育費や老後資金にも柔軟に対応できます。
4. 年収別シミュレーション:いくら借りて、いくら返す?
年収別に「無理のない住宅ローンの上限」と「月々の返済額」をまとめると、以下のようになります。
年収 | 安全な借入額(目安) | 月々の返済額(35年・金利1.5%) |
---|---|---|
400万円 | 約2,000万円 | 約6.1万円 |
500万円 | 約2,500万円 | 約7.7万円 |
600万円 | 約3,000万円 | 約9.2万円 |
700万円 | 約3,500万円 | 約10.7万円 |
800万円 | 約4,000万円 | 約12.2万円 |
900万円 | 約4,500万円 | 約13.8万円 |
1,000万円 | 約5,000万円 | 約15.3万円 |
シミュレーションはあくまで目安とし、「教育費」「老後資金」「万一の備え」も含めた総合的な家計設計を意識しましょう。
5. 年収と頭金・諸費用のバランスも重要
住宅購入時には「物件価格=ローン額」と考えがちですが、実際は頭金や初期費用も加味する必要があります。
例として3,000万円の物件を購入する場合、理想的には以下のような自己資金が求められます:
- 頭金:600万円(物件価格の20%)
- 諸費用:150万円前後(登記・保険・仲介手数料など)
合計で約750万円の自己資金が必要になることも。
6. 共働きと単独名義で変わる購入可能額
夫婦共働きの場合、住宅ローン審査で「収入合算」や「ペアローン」を利用することで、借入可能額が大きくなります。
例として、
- 夫:年収400万円
- 妻:年収300万円
→ 合算年収700万円とみなされ、約3,500万円の物件も購入可能となります。
ただし、共働きを前提とした返済は「出産・育休・転職」などライフイベントの影響を受けやすいため注意が必要です。単独名義の方がリスクヘッジしやすいケースもあります。
まとめ:年収で買える家は「返せる家」
「いくらの家が買えるか?」という問いに、明確な答えはありません。大切なのは、年収から逆算して「無理なく返せる価格帯」を知り、長期的なライフプランに沿った資金計画を立てることです。
さらに、自己資金(頭金+諸費用)として300〜800万円程度を用意できれば、選べる物件の幅も広がり、ローンの条件も有利になります。
住宅は「買えるかどうか」ではなく、「持ち続けられるかどうか」がカギ。余裕ある資金設計こそ、安心のマイホーム購入への第一歩です。