住宅ローン契約時の団体信用生命保険(団信)の選び方

住宅ローンの団体信用生命保険(団信)の基本

はじめに:団信の仕組みと目的

住宅ローンを契約する際、多くの金融機関では団体信用生命保険(団信)への加入を条件としています。団信は、ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金によって残りの住宅ローンが完済される仕組みです。これは、遺された家族がローン返済の負担を背負わずに済むという、大きな安心を与える制度です。

団信の目的は大きく分けて2つです。

  1. 住宅ローンの債務をゼロにする
  2. 家族の生活基盤を守る(住まいを失わないようにする)

ただし、団信には複数の種類や特約があり、保険料(=上乗せ金利)や保障範囲も異なります。過剰保障で保険料が高くなりすぎたり、逆に必要な保障が不足したりしないよう、契約前に慎重に選ぶことが大切です。

1. 一般団信と特約付き団信の違い

団信は大きく分けて「一般団信」と「特約付き団信」に分類できます。

一般団信

死亡または高度障害状態になった場合にのみ、住宅ローン残高がゼロになります。多くの民間銀行では一般団信が基本プランとして提供されます。

特約付き団信

一般団信に加えて、特定の病気や状態に対応する特約が付くタイプです。代表的なものは以下の通りです。

  • がん団信:がんと診断された時点でローンが完済される
  • 三大疾病団信:がん・急性心筋梗塞・脳卒中に対応
  • 八大疾病団信:三大疾病+慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎・高血圧性疾患などを追加
  • 全疾病保障:病気やケガで長期就業不能になった場合に返済免除や給付

特約が増えるほど保障範囲は広がりますが、上乗せ金利や保険料も高くなるのが一般的です。

💡同じ金利差でも返済総額への影響は借入額・返済期間で大きく変わります。
例)上乗せ年0.2%は3,500万円・35年返済で総支払額が100万円以上増えることも。
「必要な特約だけ」に絞り、総支払額まで比較検討しましょう。

2. 疾病保障付き団信(がん・三大疾病など)の特徴

疾病保障付き団信は、働き盛り世代にとって魅力的な制度ですが、その仕組みを正しく理解しておく必要があります。

がん団信

がんと診断された時点でローンがゼロになる診断給付型が主流です。入院や就業不能を条件としないため、比較的受け取りやすいメリットがあります。ただし、加入後一定期間(90日〜180日)は免責期間があり、その間の診断は対象外となる場合があります。

三大疾病団信

対象はがん・急性心筋梗塞・脳卒中。急性心筋梗塞や脳卒中については「60日以上の労働制限がある場合」など条件が厳しく、がんに比べて支払い条件を満たすハードルが高い傾向にあります。

八大疾病・全疾病型

より幅広い病気やケガをカバーしますが、条件や免責期間が複雑になりがちです。上乗せ金利が0.3%〜0.5%程度と高めになることも多いため、費用対効果の検討が不可欠です。

💡既存の医療保険・がん保険と団信の特約が重複していないかを必ず点検。重複すると保険料負担が増えるだけなので、団信でカバーできる分は民間保険をスリム化するのも一手です。

3. 保険料(上乗せ金利)と保障範囲のバランス

団信の保険料は、住宅ローンの金利に上乗せされる形で支払います。たとえば、ローン金利が0.5%で疾病保障特約を付けると+0.3%になれば、実質0.8%の金利負担になります。

タイプ上乗せ金利の目安
一般団信金利に含まれる(追加負担なしが多い)
がん団信+0.1%〜0.2%
三大疾病団信+0.2%〜0.3%
全疾病型+0.3%〜0.5%

例:3,000万円・35年ローンで+0.3%にすると、総返済額が約180万円前後増える計算になります。保障を広げるほど保険料(上乗せ金利)が高くなるため、受け取れるメリットとのバランス評価が重要です。

💡比較は「月返済額」だけでなく総支払額で。上乗せ金利を変えて複数パターンを試算し、必要な特約だけに絞るとムダを抑えられます。

4. 公的保障や既存保険との重複確認

団信の選定では、公的保障既存保険のカバー範囲を踏まえた全体最適が欠かせません。

公的保障

  • 遺族年金:契約者が死亡した場合、子どもの有無や配偶者の年齢に応じて支給。
  • 障害年金:高度障害や一定の病気で働けない場合に支給。

既存保険

生命保険や収入保障保険にすでに加入している場合、団信と合わせると過剰保障になり得ます。例:死亡時にローンがゼロになる団信に加え、同額の死亡保障を重ねると現金は増える一方で、保険料負担は二重になります。

チェックポイント

  1. 家計全体で死亡・高度障害時に必要な金額を算出。
  2. 団信+公的保障+既存保険でどこまでカバーできるか整理。
  3. 不足分のみを追加保障(特約や民間保険)で補う。
💡まずは「必要保障額の算定 → 現状カバーの棚卸し → 不足分の最小化」の順で。団信で住宅分は消えるため、死亡保障は生活費・教育費中心に再設計するのが定石です。

5. 加入時の健康状態による選択肢

団信は生命保険の一種であるため、加入には健康状態の告知が必要です。持病や過去の病歴によっては、通常の団信に加入できない場合もあります。

ワイド団信

持病がある人向けに、引受条件を緩和した団信です。金利が+0.3%〜0.5%程度上乗せされることが多いです。

団信なしローン+別途生命保険

団信に加入できない場合、団信なしでローン契約をして、民間の生命保険や収入保障保険でカバーする方法もあります。

💡健康状態によって選べる選択肢が変わるため、住宅ローンの事前審査と同時に団信の加入条件も確認しておくとスムーズです。

6. 団信以外で備える場合の代替策

団信に頼らず、別の方法で住宅ローン返済リスクをカバーすることも可能です。

  • 収入保障保険:死亡または高度障害時に、毎月定額の給付金が支払われる保険。ローン返済に充てやすい。
  • 生命保険の増額:住宅ローン残高に合わせて一時的に生命保険の保障額を増やす。
  • 就業不能保険:病気やケガで長期間働けない場合に収入を補う保険。
💡団信以外で備える場合は、ローン残高+生活費をカバーできる金額・期間を設定することが大切です。

まとめ:住宅ローンと保障を最適化する団信選び

団信は住宅ローン契約時にほぼ必須の保険ですが、プランや特約の選び方次第で、将来の安心度も保険料負担も大きく変わります。

  • 保障内容の広さと保険料(上乗せ金利)のバランスを取る
  • 公的保障や既存保険と重複しないようにする
  • 健康状態に応じて最適な加入方法を選ぶ
  • 必要があれば団信以外の方法も検討する

住宅ローンは数千万円単位の大きな負債であり、その返済計画は家計全体の生命保険設計と切り離せません。団信を選ぶときは、「もしもの時に家族が困らないこと」と「毎月の返済負担を無理なく続けられること」の両方を満たすプランを見極めることが、長期的な安心につながります。

💡団信は住宅ローン契約時の一度きりの選択になりがちです。ライフステージや健康状態の変化を見越し、将来も無理なく払い続けられる保障を選びましょう。

ライフプランシミュレーション

ライフプランシミュレーション

未来のお金を見える化しよう

教育費・保険・住宅・老後資金など、人生に必要なお金を簡単にシミュレーションできます。
将来の収支や資産形成をグラフと表でチェック!

➔ シミュレーションしてみる
住み替えシミュレーション

住み替えで家計はどう変わる?

現在の住まいと新居の条件を入力するだけで、住み替えによる住居費用の変化をチェックできます。
シミュレーションで負担の変化を見える化しましょう。

➔ 住み替えをシミュレーション