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相続放棄の手続きと注意点:借金がある場合の対処法

相続放棄のイメージ

はじめに:なぜ相続放棄という選択があるのか

相続と聞くと、「財産を受け取ること」とイメージする人が多いかもしれません。しかし、実際の相続には、現金や不動産といったプラスの財産だけでなく、「借金」や「未払い金」などのマイナスの財産も含まれます。中には、資産よりも負債の方が多いケースも珍しくありません。こうした場合に備え、相続人には「相続放棄」という選択肢が法律で認められています。

相続放棄は、相続を“受け取らない”という決断ですが、適切に行わなければ放棄が認められなかったり、逆に借金を背負ってしまうリスクもあるため、手続きの理解が極めて重要です。この記事では、相続放棄の基本知識から具体的な流れ、注意点までを詳しく解説します。

1. 相続放棄できる条件と対象者

相続放棄ができるのは、被相続人(亡くなった人)の財産を「相続する立場にある人」です。具体的には、法定相続人(配偶者・子・親・兄弟姉妹など)が該当します。相続順位が高い人が全員放棄した場合に限って、次の順位の人が相続人となり、放棄する権利も移ります。

たとえば、被相続人に子がいればその子が第一順位の相続人ですが、その子が全員相続放棄をした場合には、第二順位である親が相続人になります。さらに親も放棄すると、第三順位の兄弟姉妹に相続権が移ります。

💡 相続放棄は「一部だけ放棄」はできません。相続をするならすべてを受け継ぎ、放棄するならすべてを放棄する「包括承継」が原則です。

2. 家庭裁判所での手続きの流れ

相続放棄は、口頭で「放棄する」と言うだけでは成立しません。必ず、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出する必要があります。手続きの流れは次の通りです。

  1. 被相続人が亡くなったことを確認
  2. 相続財産(債務も含む)の状況を調査
  3. 放棄する意思が固まったら、家庭裁判所へ申述
  4. 裁判所による書類審査(数週間)
  5. 「相続放棄受理通知書」の発行
💡 放棄の申述先は、被相続人の「最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。遠方であっても、郵送での対応も可能です。

3. 申述書の書き方と必要書類

相続放棄の申述には、以下の書類が必要です:

  • 相続放棄申述書(裁判所の定型書式)
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の除籍(戸籍)謄本および住民票除票
  • 収入印紙と郵便切手(裁判所指定分)

申述書には、「なぜ相続放棄をするのか」という理由を簡潔に書く欄がありますが、通常は「負債が多いため」「相続する意思がないため」と記載すれば問題ありません。必要書類の収集には数日~1週間程度かかることもあるため、余裕を持って動くことが重要です。

💡 記入ミスや添付漏れがあると、受理が遅れる場合があります。不安がある場合は、司法書士や行政書士に相談すると安心です。

4. 相続放棄の期限と注意点(3ヶ月ルール)

相続放棄には期限があります。民法では、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に申述する必要があると定めています。

この「相続の開始を知ったとき」とは、通常は被相続人が亡くなったことを知ったタイミングを指します。ただし、負債の存在を後から知った場合など、個別事情によって起算点が異なることもあるため、慎重な判断が求められます。

💡 3ヶ月を過ぎても「やむを得ない事情」があれば、家庭裁判所が特別に認めることもあります。ただし、ハードルは高く、原則通りの期限遵守が安全です。

5. 放棄後の取り扱い(他の相続人への影響)

相続放棄をすると、その人は“初めから相続人でなかった”ものとみなされます。その結果、他の相続人の相続分が増えたり、新たに別の親族に相続権が移ることになります。

たとえば、長男が相続放棄をすると、次男や三男の相続分が増える、または親や兄弟姉妹が新たに相続人になるといった具合です。この影響を理解せずに放棄すると、家族内の混乱や不満を生むことがあります。

💡 放棄前には、他の相続人と意思疎通を図っておくことが重要です。知らぬ間に相続権が移って困惑されるケースもあります。

6. 単純承認・限定承認との違いと選び方

相続には、以下の3つの選択肢があります。

  • 単純承認:財産も負債もすべて受け継ぐ(何もしなければ自動的にこれ)
  • 相続放棄:すべての財産と負債を受け取らない
  • 限定承認:相続財産の範囲内で負債を支払う(超過分は負担しない)

限定承認はメリットもありますが、相続人全員で手続きする必要があり、手間と時間がかかるため利用例は少数です。

💡「遺産がプラスかマイナスか分からない」という場合には、限定承認の検討も有効です。慎重な資産調査が前提となります。

7. 放棄をしたのに取り立てられるケースとは?

まれに、相続放棄をしたにもかかわらず、債権者から「支払ってください」と請求が来ることがあります。この場合、放棄が正式に受理されていれば、法的には支払義務はありません。ただし、放棄の手続きが完了していなかった、または書類不備で無効になっていた場合は、請求が有効になる可能性があります。

また、生前に連帯保証人になっていた場合や、被相続人と共有名義の借金がある場合などは、放棄しても責任が残るケースがあるため要注意です。

💡 放棄をしたら、必ず「受理通知書」を保管し、債権者からの問い合わせがあれば提示できるようにしておきましょう。

まとめ:放棄は「正しく」「迅速に」が鉄則

相続放棄は、マイナスの財産から身を守る重要な手段ですが、知識不足や手続きの遅れによって大きなトラブルに発展する可能性もあります。

特に重要なのは、次の3点です:

  • 「3ヶ月以内」という期限を守ること
  • 家庭裁判所を通じた正式な手続きを行うこと
  • 他の相続人や家族との連携を取ること

遺産が多額でなくても、借金がある可能性が少しでもあれば、まずは財産の調査から始めることが大切です。そして、「放棄」「承認」「限定承認」それぞれの違いを理解し、自分にとって最も適した方法を選びましょう。

万が一のときにあわてずに対応するためにも、この記事の内容をぜひ事前に確認しておいてください。

💡 相続放棄はスピードと正確性が命。迷ったときは専門家の力を借りましょう。

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