
はじめに:下落相場は必ずやってくる
投資において、上昇相場だけを狙って利益を積み上げることは不可能です。歴史を見ても、市場は定期的に暴落や調整局面を迎えます。リーマンショック、コロナショック、ウクライナ侵攻など、予想外の出来事が相場を大きく揺るがしました。
こうした下落局面では、多くの投資家が冷静さを失い、間違った行動を取ってしまいがちです。しかし、相場が荒れたときこそ、真価が問われます。本記事では「下落相場でやってはいけない5つの行動」と、その代わりに取るべき戦略について解説します。
1. やってはいけない① 焦って全売却する
暴落が始まると、「もっと下がるかもしれない」という不安から、すべての資産を一気に売却したくなる気持ちは理解できます。しかし、そこで感情的に動くと、最も損を確定させてしまう結果になりかねません。
歴史的にも、急落後に急反発するケースは少なくありません。2020年のコロナショックでは1か月で30%以上下げましたが、そこからわずか数か月でV字回復を果たしました。下がった後に買い戻すのは心理的に難しく、結局機会損失にもつながります。
2. やってはいけない② SNSで噂に飛びつく
「今これが買いだ」「この銘柄は上がる」といったSNSの情報に流されるのは非常に危険です。特に下落局面では、人々の不安や欲望を煽るような投稿が拡散されやすく、冷静な判断力が鈍ります。
情報の出どころを確認せず、雰囲気や流行に乗って取引すると、かえって損失を拡大させる可能性があります。SNSは情報の一部として参考にする程度に留め、自分の判断軸を持つことが重要です。
3. やってはいけない③ 一発逆転を狙ったギャンブル投資
「大きく下がったから、今こそ一気に取り戻そう」と考えて、レバレッジ商品やハイリスク銘柄に手を出すのは典型的な失敗パターンです。相場が荒れている時期は、ボラティリティも高く、急落・急騰の波に飲まれやすいのです。
信用取引やCFD、レバレッジETFなどは、短期的に利益を狙うには向いていますが、下落相場では凶器にもなります。特に資産全体を一気にかけるような「博打的」投資は避けましょう。
4. やってはいけない④ 本業や生活費を投資に回す
相場が大きく動いていると、「今入らなければ損するかもしれない」と考え、予定外の資金まで投入する人がいます。しかし、投資は余裕資金で行うべきものであり、生活費や教育費、本業資金に手をつけるのは非常に危険です。
下落相場は長期化する可能性もあり、急に資金が必要になったときに取り崩さなければならなくなれば、損失が確定します。最悪の場合、生活そのものが破綻するリスクもあるため、絶対に避けましょう。
5. やってはいけない⑤ 感情的に買い増し・損切りを繰り返す
ナンピン買いを繰り返して資産が偏ったり、「もう我慢できない」と感情的に損切りしてしまったりするのは、冷静さを欠いた証拠です。感情に任せた取引は、ポートフォリオを乱すだけでなく、精神的なダメージも大きくなります。
下落時は、あらかじめ決めたルールや戦略に従って行動することが大切です。「●%下がったら買い増し」や「損切りはポジション全体の●%まで」など、機械的な判断基準を持ちましょう。
6. 下落相場の正しい向き合い方
暴落や調整局面において重要なのは、「起こることを前提に備える」ことです。市場の上下動は避けられないものとして捉え、リスクに備えることでパニックを回避できます。
・投資の目的と期間を明確にしておく
・自分のリスク許容度を数値化しておく
・下落時の対応方針(リバランス・放置・追加投資)を決めておく
準備ができていれば、いざというときに慌てずに行動できます。
7. 落ち着いて行動するための準備
下落相場で冷静さを保つには、事前の準備が不可欠です。とくに以下のような対策が有効です。
・現金比率を高めに保つ(生活費3~6ヶ月分は確保)
・ポートフォリオの分散性を高めておく
・シナリオ分析で複数の「もしも」を考えておく
・自分用の「投資ガイドライン」を作っておく
また、投資仲間やコミュニティで意見交換することで、心理的な安定が得られる場合もあります。
8. リスク資産と現金のバランスを見直す
相場が荒れているときほど、資産全体の配分を見直すタイミングです。株式だけでなく、債券・金・現金といった他の資産を組み合わせ、全体のリスクをコントロールすることが求められます。
「攻める」資産と「守る」資産をバランスよく配置することで、どのような局面でも耐えられる体制が整います。とくに、定期的なリバランスは下落相場での買い増しチャンスにもなります。
まとめ:「暴落」は試練であり、乗り越える力が養われる
相場が下がることは、誰にとっても不安であり試練です。しかし、それをどう乗り越えるかで投資家としての成長度が変わります。
・パニック売りや衝動的な取引を避ける
・情報に踊らされず、自分のルールを守る
・分散・リスク管理・心の余裕を持って臨む
暴落は確かに痛みを伴いますが、それを経て得られる学びと経験は何よりの財産です。 下落相場に冷静に向き合い、感情に振り回されない長期投資家を目指しましょう。